悲運の朝鮮皇太子妃、描く 在日2世歌手が創作オペラ
オペラ歌手 田月仙(チョンウォルソン)

   日韓国交正常化50年に合わせ、在日コリアン2世のオペラ歌手田月仙(チョンウォルソン)さんが、朝鮮王朝最後の皇太子妃李方子(りまさこ)(1901〜89)を演じる創作オペラ「ザ・ラストクイーン」をつくり、27日に新国立劇場(東京都渋谷区)で上演する。日本の皇族に生まれて朝鮮の李垠(イウン)皇太子と結婚し、韓国で亡くなった波乱の生涯を描く。
 ■皇族の生まれ
 方子は旧皇族・梨本宮守正王の長女。皇太子(昭和天皇)の妃(きさき)候補といわれたが、日本による韓国併合後、朝鮮王朝最後の李垠皇太子と政略結婚させられた。夫とともに東京で暮らし、日本の皇族に準じて扱われたが、終戦で王族の身分も国籍も失い、生活苦に陥った。東京・紀尾井町の邸宅は売却され、後の赤坂プリンスホテル旧館となる。63年には夫妻で韓国に移り住み、晩年は韓国で障害者福祉事業に尽くした。
 オペラは、方子が新聞記事で自分の政略結婚を知る場面から始まる。義父の国王高宗(コジョン)と生後8カ月の長男晋(チン)を相次いで亡くし、悲しみのどん底に。
 ■日韓の懸け橋
 戦後は夫の故国に帰りたいと願ったが韓国政府に受け入れられず、18年後にようやく念願かなって夫妻で韓国に渡ったとき、すでに夫は重い病を患っていた。夫の死去後も韓国に残り、日韓両国の懸け橋をつとめた生涯を振り返る最期の場面でこう歌う。
 「私の大切なふたつの祖国/私が生まれ育った国/私に愛をさずけた国」
 田さんは日本と朝鮮半島を歌で結ぶ活動を続け、日韓と北朝鮮の3国で公演。日韓両国を二つの祖国として生きた方子をオペラで演じたいと、10年以上前から構想を温めてきた。
 ■遺品から再現
 近年見つかった方子の日記や手紙などを読んで筋立てをつくった。衣装は、日本から韓国へ寄贈された方子の遺品、朝鮮王朝の大礼服「チョグ衣(チョグイ)」を、学校法人文化学園(渋谷区)の協力で再現した。音楽は、現代音楽に日韓のリズムを取り入れた曲を歌うという。
 田さんは日韓の相互理解に尽くした功績が評価され、今年度、外務大臣表彰を受けた。「私も日本と朝鮮半島のはざまで生きてきた。今年は国交50年の節目。日韓関係が悪化している中、歌手としてオペラで何かできないかと考えました」と語る。「悲運の皇太子妃と呼ばれた方子妃の前半生だけでなく、福祉に尽くし『韓国の母』と慕われた晩年にも光をあてたい」と意気込む。(編集委員・北野隆一)
 

Chon Wolson officilal Website www.wolson.com